金庫はある程度の大きさと重量をもつことで、セキュリティー性能を高めています。そのため一度設置するとそう簡単には移動することはできませんし、部屋の模様替えや会社のデスクなどの配置を変更する際にも、金庫だけは同じ場所で動かすことができないということはよくあります。
業務用の金庫はたいてい小型の冷蔵庫くらいの大きさがありますが、たとえば重要書類やデータディスクなどをしまっておくには容量が足りないことがほとんどです。つまり通常サイズの業務用金庫は、あくまで現金や有価証券のようなものをしまっておくものという意味合いが強く、それ自体は容易に換金することができないようなものを大量にしまうことはあまり想定されていないということになります。
ところが近年、情報セキュリティーの観点から、個人情報の保護などのコンプライアンスが重要視されるようになりました。個人情報に関わる書類は施錠できる場所で保管されること大前提であり、OA機器へのアクセスコードやパスワード管理においても、以前のような形式のみのものではもはや通用しなくなっているのです。
金庫はセキュリティーという意味では非常に有用なものですが、前述の通り、しまうべきものの範囲が広がるにつれ、容量的に無理が生じてきました。そこで登場するのが、銀行にあるような金庫室を、各企業が設置するというものです。実は近年、そうしたニーズに応える形で、組み立て式の金庫室を設置する企業が増加しています。金庫室であれば、終業時にすべての資料を室内に入れ、施錠してしまえば良いことになりますから、手間は確かに省けます。もちろん個室が金庫として機能しているのですから、内部で分類などを行えば非常に利便性の高いものになります。
金庫室はもはや大手銀行のものというわけではなくなりつつあります。情報管理や社内のセキュリティー問題が表面化するにつれ、今後もニーズが高まっていくことでしょう。